便 利 な ? 電 子 ビ ザ

 

 日本人に人気がある国に、日本人が観光目的で渡航する場合、ビザが必要な国ってそれほど多くはないと思う。USA、カナダ、EU諸国、タイ、シンガポール、香港などはどこもビザなしで渡航できる国々だ。人気の渡航先の中でビザが必要な国は割と少ないが、意外にもオーストラリアは日本人に大人気の旅行先にもかかわらず、その希少な国のひとつである。

 とは言え、そこはさすがオーストラリア。ベトナムやカンボジアのようにビザの取得に何日もかかるようなことはない。なんと電子ビザである。もちろん在外公館でもビザ取得はできるようだが、わざわざ出向かなきゃならないうえに手数料もA$50くらい取られる。その点、電子ビザならクレジットカードとパスポートさえ手元にあれば、自宅のパソコンからビザ申請ができ、ブラックリストに載っていない限り即刻ビザが発給されるし、手数料もA$20と低めになっている。

 しかしながらこの電子ビザ、電子というだけあってパスポートにはビザの影も形も残らない。パスポートを各国のスタンプやステッカーで埋めたい人にはちょっと物足りないシステムだ。しかも、1年間有効のビザだが、有効期限もパスポートには表示されないので、正確な有効期限を覚えているのが非常に難しく、旅行の度に(そんなに行くものでもないだろうが)有効期限は大丈夫か?などと不安にならなくてはならない。インターネットで有効期限の照会はできるが、申請した時の整理番号が必要になってくる。そんな番号を覚えるくらいなら有効期限を覚えた方が利口だ。もっとも、申請画面を印刷しておけばいいのだが、どうせそんな紙は旅行が終わってしまえば、どこにしまったかさえ忘れるに決まっている。このように、便利なようで不便な面があるのが電子ビザの特徴である。

 今回の旅行の飛行機のチケットが取れた時点で、私は喜び勇んで電子ビザを申請した。何も犯罪歴のない、善良な市民の代表のような私と家族には、当然のように余裕でビザが下りた。ギリギリでビザが下りるということがあるのかどうかは知らないが、とにかく私たちには余裕で下りた。整理番号の付いた申請画面をご丁寧に4名分印刷し、まさかとは思うがビザが消えずにちゃんとあるかどうか、たまに抜き打ちで確認してやるつもりだった。ところがそのまさかが起きた。旅行も迫ったある日、整理番号を入力しビザの確認をしたところ、出てきたメッセージは「該当するビザの有効期限は残っておりません」だった。しかも家族分全員。これにはたまげた。結局、チケットを発行した旅行会社の方で、既に私がビザ申請を済ましているとは知らず、気を利かせて再び申請してくれていたので、後から申請された方が優先され、先に私が申請しておいた方のデータは上書きされたということのようだった。じゃあ、私が払った4名分80ドルの手数料はどうなるかと言うと、払い損である。旅行会社の方は客へのサービスということで無料でやっているらしく、二重に請求されるという最悪の事態は免れたが、最初から旅行会社にやってもらってれば全くタダで済んだのにという、大きな機会損失感が残った。やはり、電子ビザは便利なのか不便なのかわからない。