ハイテクの死角 入国カード

 

 外国旅行をすると、飛行機の搭乗時や機内で、訪問国の入国カードをもらって記入することになる。パッケージツアーだと添乗員や係員がやってくれるそうなので、あるいはそういうカードの存在を知らないまま入国しているケースもあるかも知れないが、かなり高い確率で外国に入国する時には必要になるシロモノだ。

 ビザまで電子化されているほど入管書類のIT化が進んでいるオーストラリアでは、入国カードもタダモノではない。空港に行ってチェックインカウンターで搭乗の手続をする時、チケットのデータとパスポートのデータをキーインすると、なんとオーストラリアの入国カードが自分の名前入りで出てくるのである。これは恐らく、チケットのデータとパスポートのデータ、さらに前述の電子ビザのデータをシステム的に照合し、全てのデータが一致すれば入国カードが自動発行されるという仕組と考えられる。そして、その入国カードには磁気ストライプがあって、そこに旅行者のビザデータが入っていて、入国時にはその磁気データを機械に読ませればよいだけなので、手続もスムーズに行く、ってな触れ込みになっているのだろう。その名もEXPRESS CARDと命名されており、まことにシステマティックである。

 しかしシステムは往々にして例外に弱い。別に、今回その弱さを試そうと思ったわけでもないが、長男のチケットの姓が、「KUWABARA」になるべきところ「KUWARABA」になっていた。この場合、パスポートデータとビザデータは「KUWABARA」になっているので、チケットのデータと不一致になり、結果として入国カードが発行できなくなってしまった。結局こういうケースでは、他の国と同様に磁気ストライプがないただの紙の入国カードを使うことになるのだが、こんなシステムを導入していなければ、何事もないように搭乗券は発行されて、何事もないように普通の紙の入国カードに記入し、入国審査ではパスポートとビザを確認するだけなので、チケットや搭乗券なんかどんな記載間違いがあっても問題ではなく、何事もないように入国することができる。実際、私は何度かチケットのスペルが違っていたことがあったが、マイレージの加算が自動でできなかったこと以外に問題はなかった。ところが、なまじIT化されているために、何度もキーインしなおしてみたり、事情を客に説明したりとそれなりの手間がかかることになる。

 挙句の果て、メルボルン空港の入国審査場はEXPRESS CARD専用のカウンターがひとつしか開いていなくて結構な行列になっており、普通紙カウンターに並ばなくてはならない私達(3人分はEXPRESS CARDだけど1人だけ普通紙のため、普通紙組になる)と比べて、手続に要する時間はほとんど変わらなかった。恐るべしハイテク。でも、このような先進的(実験的)なことを積極的に採用するその姿勢には素直に感心する。